
社会・ビジネス環境の著しい変化や競争の激化、顧客の意思決定プロセスの複雑化やニーズの多様化にともない、多くの営業組織が戦略の見直しや改革への取り組みを加速させた2022年。一方、「The Model」に代表される分業制への移行や、セールステックの導入など営業DXに踏み出すも、“人が変われず”期待した成果を出せずに悩む営業組織のリーダーも少なくありません。こうした状況下、「営業成果」を起点とし「営業パーソンの行動変容」を促すために必要な施策をデータドリブンで開発、提供しつづける役割として「セールスイネーブルメント(Sales Enablement) 」に注目する組織が急速に増えたことも2022年の特徴の一つといえるでしょう。本記事では、世界最大のイネーブルメントコミュニティSales Enablement Society(SES) のレポートとともに、最新の営業トレンドをご紹介します。
皆さんはSales Enablement Society (通称SES)という団体をご存じでしょうか?
SESは北米で2013年に発足した団体で、50か国から約11,000人のメンバーを抱える世界最大のSales Enablementコミュニティー(NPO)です。
企業に所属するセールスイネーブラー、テックベンダー、また調査会社などのメンバーが所属しており、セミナーやパネルディスカッションなどイネーブルメントに関するトピックの共有と議論の場が提供されています。
その中で、年に一度秋口に開催されるもっとも大きなイベント「Sales Enablemnet Annual Conference」があります。今年は実に3年ぶりのリアル開催で、弊社も開催地ジョージア州アトランタまで飛び参加してきました。久しぶりのリアル開催ということもあり、参加者はおよそ450名という大盛況。米国本土以外にも、Australia、Israelなど遠方からの参加者も見られ、主催者、参加者ともに熱気が感じられました。
会場ではパネリストの知見の共有、現役イネーブラーのブレークアウトセッションに加え、さまざまなイネーブルメントテックベンダーのブースが設置されており、最新のセールスイネーブルメント事情やテクノロジーについて理解を深めることができました。
IT分野を中心とした調査会社であるGartner社が行った2022年6月の調査によると、BtoB顧客の83%がいまやオンライン商談を希望している一方で、顧客は営業パーソンによって「誘導されている」と感じるケースも増え、成約到達率は24%にしか達していないということです。
このレポート結果は、SESでも紹介されていましたが、会場にいるイネーブルメント従事者からは納得感のある受け入れ方をされているようでした。コロナを経て、オンライン商談がニューノーマルとなったいま、顧客エンゲージメントはよりいっそう大きなテーマとなっています。
Gartnerの調査結果について、現役イネーブラーの間ではさまざまな原因について語られていました。「営業パーソンが売上至上主義でガツガツしすぎている」「オンラインで顧客と関係が築きにくくなった」「スクリプトを繰り返しているような営業活動」「傾聴力やディスカバリー力の不足」「システマティックな分業制の弊害」「顧客が情報過多になっている」などなど。
どれも要因として正しそうですが、共通しているのは「顧客理解ができない」という本質的かつ難しいテーマであり、イネーブラーにとっても看過できない課題に直面しているといえるでしょう。
この課題に対する具体的な取り組みを考えるうえで、セッションでは「3つのC」という軸が紹介されました。
具体的施策については各社で違いが出てくることを前提として、顧客エンゲージメント向上のためのアプローチとして、大きくは「コンピテンシーの体系構築」と「テクノロジーの活用」という2つが考えられます。
米国のイネーブラーと話していると、共通した課題として必ず出てくるのが「(課題を明確化するための)リスニング力」です。
「ディスカバリースキル」や「アクティブリスニング」とも表現されるスキルですが、オンライン商談が当たり前となったいま、これまで以上に必要性が増しています。「課題発見のための解像度の高いリスニング・質問力」の向上は、新人を対象としたオンボーディングのみならず、中堅・ベテラン層の育成の場でも課題と捉えている会社が多いようで、ロールプレイ、外部講師の招聘など、各社投資をしている印象を受けました。
時間に対する顧客の意識が高まり、「時間を無駄にする営業パーソンか否か」を見極めるといった具合に顧客の目が厳しくなってきている中、顧客用にコンテンツをカスタマイズするスキルや顧客が求める営業スタイルを見極め使い分けるスキルの強化も重要テーマといえます。
営業に求められるスキルについて語られる場面は多いと思いますが、今回のSESのセッションで、「施策を考える前に、必要とされるコンピテンシーを改めて組み立てるべき」といった話が米国調査会社のForrester社から提示されていたことも特徴的でした。
「自社の営業に求められる要素」の体系化は急務といえるでしょう。
顧客エンゲージメントの向上に向けてのもう一つのアプローチが「テック」の活用です。今回ベンダーのブースを回る中で、大手ベンダーを中心に「顧客が何を欲しがっているかの発見」を補助するような機能を搭載しているソリューションが目立っていました。
その代表的なものが「デジタルセールスルーム」です。
下の図は、Gartner社が2022年に発表したセールスネーブルメントテックのグルーピングですが、新たに「Analytics(分析)」機能と「Digital Sales Room(デジタルセールスルーム)」がカテゴリーとして加えられています。
Allego社という大手セールスイネーブルメントツールベンダーの例を挙げましょう。彼らはこれまで「コーチング・トレーニング」「コンテンツ」を武器にしてきましたが、それに加え、「デジタルセールスルーム」という新機能を搭載しています。
従来、アポを取り、顧客に時間を確保してもらってから商談するという形式が一般的だと思いますが、同社のデジタルセールスルームという機能は、各顧客に対して「オンライン上の商談Room」を用意し、そこに会社紹介の動画や顧客向けにカスタマイズされた資料などを設置したうえでURLを送り見てもらうというものです。
顧客は隙間時間など、都合のよい時間にURLを踏んで「Room」に入ります。そのタイミングで営業担当者に通知が届き、顧客が今どのコンテンツを見ているのか、何のキーワードで探しているのかなど営業側が把握できるようになっています。
これは顧客が求めていることが把握しづらくなったという営業の課題に応えるための一つの解と捉えることができるでしょう。
今回のSESに参加してみて印象的だったのは、「顧客エンゲージメントの向上」がこれからの営業にとって大きなテーマとなっているということです。
「Cutomization(顧客に合わせた個別化)」「Engagement(つながり)」「Revenue Enablement(レベニューイネーブルメント)」というキーワードも多く耳にしました。それらが示しているものは、もはや小手先のテクニックやツール、営業という一部門に閉じた施策だけでは通用しなくなってきている課題を前に、テクノロジーを活用しながら組織横断的に「真の顧客理解」に努めていかなければならないという気持ちの表れと捉えることができるのではないでしょうか。
パンデミックを経てデジタルセールスがニューノーマルとなったいま、「いかに顧客から信頼されつづけるか」という永遠の課題とどう向き合うべきか、改めて企業は問われているのです。
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