
アカウントプランは「既存顧客との取引拡大」という営業方針に対して必ずといっていいほど出てくる取り組みです。けっして目新しい施策ではなく、多くのBtoB営業組織ですでに取り入れられている施策ですが、その実「形骸化してしまっている」という声もよく耳にします。本記事では、中長期的なビジネス拡大を実現させるために不可欠なアカウントプランと、形骸化させないためのポイントについて解説します。
アカウントプランとは、「重点顧客に対して、中長期スパンで取引金額を戦略的に拡大していくための攻略シナリオを計画すること」です。大手企業を顧客にもつBtoB営業組織において、アカウントプランは必須の取り組みです。
大手企業との取引を広げていくためには通常時間を要するため、一回の取引で顧客社内全体に製品サービスが導入されるケースは稀でしょう。行き当たりばったりの提案活動をしていては、本来獲得できるビジネスチャンスを逃してしまいます。
そのため、担当営業には、「どの部門に対して」、「どのような製品サービスを」、「いつ」、「どのような理由で」購入してもらうのか、他部門への展開やアップセルクロセスセルを見据えた活動を計画し、取引金額を最大化させていくことが求められるのです。
アカウントプランは最短で、確実に取引を拡大するための攻略シナリオですが、既存顧客の中でも特に取引拡大の余地が大きい重点顧客に対して行う取り組みです。これから攻めていく新規顧客や取引拡大の余地が小さい顧客に対しては適切なアプローチではない点に注意しましょう。
冒頭でもお伝えしたとおり、アカウントプランは多くの営業組織で取り組まれている一方、その実態は形骸化してしまっているケースも少なくありません。
アカウントプランが重要であることは誰もが理解しつつも、取り組みの効果を見出せないまま形式的な運用だけが残り、結果的にアカウントプランの目的である「重点顧客との取引拡大」が一向に進まないといった現状があります。
アカウントプランが形骸化する要因は主に3つあります。
<アカウントプラン形骸化の3つの要因>
まず、アカウントプランの基本は「顧客1社をどう攻略するか」を考えることにあります。「一つの商談をどう受注するか」ではありません。営業組織全体でアカウントプランに取り組む場合は、考えるべき枠組みが日々の商談とは異なることを前提に、考え方を標準化しておく必要があります。
また、アカウントプラン自体は「プラン(計画)」でしかありません。プランしたものを実際に案件化し受注して初めてそのプランの効果があるといえます。アカウントプランは「どのようにプランを整理するか」に焦点があたりがちですが、「プランしたものをどのように案件化するか」も同じくらい重要です。プランができたら「あとは担当営業が頑張れ」になりがちですが、「アカウントプランを案件化するスキル」も標準化しておく必要があります。ここは意外と盲点です。
最後3つ目です。多くの場合アカウントプランはエクセルやパワーポイントで作成されます。重要顧客のビジネス概要から始まり、これまでの取引の経緯と受注実績、顧客のビジネス戦略、組織図、ビジネスモデル、キーパーソンの特徴、顧客視点での3C分析、重点課題、自社の提案領域、アカウントチームの体制、エグゼクティブ同士の関係性整理、などなど資料として整理すると50ページほどになるのではないでしょうか。
これらの情報は日々更新されますので、アカウントプランのレビューがある際には、都度情報を更新したり追加したりする必要が出てきます。営業にとって、これは負荷以外の何ものでもありませんし、情報を更新しただけでは何が進捗したのかを定量的に見ることはできません。「取り組んでいるが進捗がデータで見えない」理由はパワーポイント運用にあります。
アカウントプランは、次の3つに取り組むことで加速させることができます。
<アカウントプラン加速に向けた3つの柱>
① シンプルなアカウントプランのフレームワークを用いること
② 「アカウントプラン to 案件化」スキルを強化すること
③ SFAと連動してアカウントプランの進捗を可視化すること
一つひとつ見ていきましょう。
アカウントプランを加速させるうえで重要となるのが「シンプルなフレームワーク」を用いることです。SFAなどと同様で、管理する情報項目を細かくすればするほど、運用に乗らなくなるためです。本当に重要な情報に絞ってシンプルな枠組みを提供するようにしましょう。アカウントプランで把握すべきことは、突き詰めると2つに集約されます。
「ビジネス」と「人」を軸に枠組みを整理できると考えるべきことがすっきりします。まずは、枠組みを整理したうえで、社内でアカウントプラントレーニングを実施するなど考え方を標準化していくといいでしょう。
アカウントプランでは顧客との取引最大化のシナリオを描きます。これは顧客視点でみると、自社の課題を解決できるシナリオが描かれていることになり、さまざまな製品・サービスを組み合わせて課題が解決される世界がそこにあるわけです。顧客のキーパーソンであれば、それがどのような世界なのか知りたいはずです。
それにも関わらず、営業担当者が自社製品・サービスのスペックや他社との違いをアピールするなど、個々の製品・サービスに閉じた提案をしてしまうと、仮に受注できたとしても「手段としての製品導入」に落ちてそこで話が終わってしまいます。
アカウントプランは大きな取引を仕掛けるためのものです。案件拡大にあたっては、製品・サービスの個別論に行く前に、顧客にとってのあるべき姿を示した“Big Picture” を顧客に見せる必要があります。「最新の技術を通じてここまでできるとは思いませんでした。ぜひこの状態を作りたいです」 「まさにこれが実現したかったことです。モヤモヤしていたことの解像度が高まりました」とキーパーソンに思ってもらう提案です。これをVision Sellingといいます。
アカウントプランの内容をしっかり整理できていればVision Sellingに落とすことが可能です。このステップを飛ばして個々の製品・サービスの提案になると商談規模が小さくなってしまいますので、「アカウントプラン to 案件化」を推進するために、Vision Sellingは大変有効なアプローチです。
アカウントプランは営業活動の一部としてとても重要な取り組みであり、本来SFAで管理すべきです。アカウントプランで計画したことが進捗しているか、実際に商談につながったのかなど、見える化しておく必要があります。
例えば、弊社では、Salesforce上で稼働する「アカウントプラン App」というアプリケーションを提供しています。Salesforceの商談と連携させ、Salesforceの標準機能であるTODO管理やレポートダッシュボードと組み合わせて活用することで、プランが実際に商談につながったのかどうか、どこまで進んでいるのかなど、アカウントプランの効果検証や進捗管理が可能となります。
ここまで取り組むことができれば、アカウントプランの進捗をKPI管理することが可能になります。では、見るべきKPIは何でしょうか。
アカウントプランの目的である「重要顧客との取引の最大化」に照らして考えると、次の2つに集約されます。
<アカウントプランのKPI>
① ビジネスポテンシャル金額(その顧客で見込める商談金額の合計)
② 実際に商談化された金額(SFAにコンバートされた商談金額の合計)
例えば、ある重要顧客から見込めるビジネスポテンシャルが10億円で、実際に商談化した金額が5億円であれば、進捗は50%になります。そして、5億円から実際に受注した金額が2億円だったとすると、アカウントプランからの受注は20%だったことになります。
ここでいう5億円の商談から2億円の受注までに追うべきKPIをSFAで管理する運用が回れば、プランから受注までのデータが可視化され、アカウントプランの進捗や効果を見ながら案件を前進させることができるようになります。
アカウントプランの運用において、皆さまの組織のボトルネックはどのあたりにありそうでしょうか。複雑なように見えて解くべき課題は意外とシンプルです。アカウントプランを効果的に運用し、重点顧客の“戦略パートナー”として継続的なビジネス拡大につなげていくための参考としてみてください。
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